こんにちは。「おうちモンテで療育.com」のりっきー(@KodomoOtona58)です。
皆さんは「感覚過敏」や「感覚鈍麻」という言葉を耳にしたことはありますか?
ある特定の感覚に関して、極端に過敏さや鈍感さがある状態のことで、発達っ子は感覚に関するこのような特性を持ちやすいと言われています。
しかし、感覚というのは「誰しも自分自身が感じている感覚を普通だと思い生活しているので、他の人がどう感じているかはわからない」ものです。
そのため、お子さんがもし感覚に課題を抱えていても、気づくのが難しかったり、フォローする方法が想像できなかったりするケースがあります。
今回の記事では感覚に関するつまずきの例とアプローチ法について、「基礎感覚」の解説や対処方法、おすすめ書籍を紹介していきたいと思います。
今回のテーマは「平衡感覚」です!
基礎感覚の要とも言える「触覚」についての記事はこちら↓
プロフィールページでも基礎感覚についてと、りっきーが基礎感覚を学ぶきっかけになった宇佐川研(発達障害臨床研究会) について書いています。
よかったらご一読ください。
Contents
45分間座れないのはなぜか知っていますか?
発達障害のうち、ADHDや自閉症スペクトラムのお子さんがいる親御さんが就学前によくあげられる心配として、「小学校の45分授業の間、うちの子がずっと座っていられる気がしない…」というものがあります。
そしてその問題を解消すべく、学習支援の療育に行ったり、座位の安定するクッションを使って長い時間座る練習をしたり、というケースをよく見聞きします。
果たしてこれは正解なのでしょうか?
答えは、「正解であり、不正解でもある」です。
大事なことは「目の前にいるお子さんが今どのような発達段階にあって、何を課題としているのか、を見極める」ということです。
学習支援や椅子のクッションがあることで、無理なく補助できる発達段階のお子さんに対しては、それは良い支援となるからです。
でも、まずまっすぐ座ることそのものに大きな課題があるお子さんにとっては、上記のような支援は本人にとってツラいものになるでしょう。
「基礎感覚」が全ての土台
なぜ、基礎感覚が全ての土台になるのか。
それは「基礎感覚に過敏や鈍麻があると、そのことによる刺激の感じ方が原因となって、その子本来の力が発揮できなから」です。
想像してみてください。
座っているときに姿勢をまっすぐ保つのに全神経を集中させないといけないような身体の状態で、学習で100%の力を発揮できるでしょうか。
また、授業で話す先生の声だけでなく、外で鳴る工事の音、体育館でボールをつく音、道路で自転車が急ブレーキをかけた音、その他様々な生活音がすべて同じ音量で耳に入ってきたら…あなたは学習に集中することができますか?
前者は平衡感覚の鈍麻(刺激を感じにくいこと)、後者は聴覚過敏(必要以上の刺激を受け取ってしまうこと)の状態像の一例です。
症状の出方は個々によって、また体調などによっても変化しますので、ひとくくりにすることはできませんが、このような状態では持っている力を100%発揮できないのは明らかです。
この「基礎感覚」の土台が整っていくことは、子どもたちの凸凹の凹の部分の謎を解く鍵と言っても過言ではありません。
「体幹が弱い」ってどういうこと?
「体幹が弱い」とはいろいろな状態が考えられますが、自分の身体の中心軸が把握できていない、つまり「座っているときに姿勢をまっすぐ保つのに全神経を集中させないといけないような身体の状態」です。
「弱い」というより「整っていない」と表現した方が伝わりやすいかもしれませんね。
発達っ子の中には赤ちゃんの頃から、触覚の敏感さなどの原因により、反り返りの姿勢が習慣化してしまい、一見体幹が強いように見られる子がいます。
我が家の長男はまさにそうでした。反り返りからぐっと戻る様子や突っ張った姿勢でぐいぐい進む姿を見て、園の先生などに「体幹も力も強いですね!」と声をかけられたことは一度や二度ではありません。
基礎感覚について学ぶまでは、りっきーもそうなのかなぁと思っていましたが、学んで実は違うということを知ったときは衝撃的でした!
反り返ったり突っ張るその仕草の裏に、困り感の大きな原因が隠れていたことに気づけて本当に良かったです。
平衡感覚に隠された秘密
平衡感覚を司る身体器官は耳の奥に隠された三半規管です。
ここで水平・垂直・回転などの身体のバランスに関わる調整がなされています。
しかし、感覚に問題を抱えていると、脳の神経回路の交通整理がうまくいかなくなり、日常生活に支障をきたすこととなります。なぜ、脳かと言うと、直接感覚を司る器官は耳であっても、そこからの刺激を受け取ってコントロールしたり判断しているのは脳だからです。
その困難さを想像をする場合、車にたとえるとわかりやすいかもしれません。アクセルとブレーキがうまくコントロールできない場面を想像してみてください。
平衡感覚の過敏がある子は、30kmで運転しているのに、100kmで運転しているかのように体感します。
そのため、ブランコのちょっとした揺れを過剰に怖がったり、滑り台の傾斜で身体の傾きをうまく調整できずバランスを失ってひっくり返ったりしてしまうのです。
逆に平衡感覚の鈍麻がある場合はどうでしょう。
100kmも出ているのに、30kmぐらいの体感しかないため、揺れ刺激を過剰に好む傾向があります。ブランコをどんなに押しても満足しなかったり、遊園地のコーヒーカップで高速回転しても全く目が回らなかったりするのです。
大体は日常の様子から過敏か鈍麻からを把握することができますが、より正確に確認するには回転椅子に座った状態で2秒1回転で20秒10回転させ、止まった後の眼球の動きを観察する「回転眼振検査」というものがあります。
回転後、何秒眼振(眼球の細かな揺れ)が出るかを確認します。平均は10秒程度ですので、5秒未満なら鈍麻、逆に20秒以上出る場合は過敏と言えるでしょう。
過敏も鈍麻もどちらも平衡感覚の機能が正常に働きにくいことを意味します。そのような状態では、身体を一定時間まっすぐな姿勢に無理なく保つことにエネルギーが必要です。運動・学習など高度な活動がスムーズにできるようにはこの部分を援助してあげるアプローチが必要となってくるのです。
学習できる身体にするための基礎固めをしよう
家庭でできる手軽な方法としては、トランポリンやバルーンでのエクササイズがあります。一定のリズムで横にブレずに縦揺れを繰り返すことにより、体軸の安定性が増していきます。
単体で行うのはもちろんですが、りっきーがオススメなのは、その名も「バルンポリン®️」です。
全国規模で様々な支援者や親御さんが参加される宇佐川研(発達障害臨床研究会)で考案された基礎感覚のアプローチ法です。
トランポリンの上にピーナッツ型のバルーンを置いて、圧をかけながらバウンドします。
安全面に考慮する必要はありますが、おうちで親子で手軽にできるオススメのアプローチです。
詳しく知りたい方は宇佐川研のホームページをご覧ください。
また、感覚統合の基礎や、集団でのあそびについては、こちらの本が初心者にもわかりやすく、かつ詳しく書かれていますのでオススメです。
姿勢が安定するとどんないいことがある?
姿勢が安定すると、どんないいことがあるでしょう?
まずは、姿勢を保つために労力を割かなくてよくなります。当たり前に感じるかもしれませんが、これは実は大きな変化なのです!
おすわりが安定した赤ちゃんも手で支えがいらなくなると両手が自由に使えるようになり、手を使った活動がどんどん発達していきます。
同じように姿勢が安定すると、まずは視線が上がり、注視したり、頭を固定した状態での視線の移動(眼球運動)が改善されやすくなります。
視線が安定的に移動できるようになると、黒板に書かれたことを板書するなどの目と手の協応が必要な高度な動作がしやすい身体になっていくのです。
板書に関しては、手首の動きや細かい微細運動が関わってきますので、他にも必要な発達はありますが、少なくとも姿勢が安定することはその準備ができた、という大きな発達の一歩と言えるのです。
ビジョントレーニングをする前に
上記に書いたような「発達の順序性」があるため、準備ができていない身体にいきなりビジョントレーニングだけしても効果は出にくいです。
ビジョントレーニングはある程度体幹の土台がしっかりしてから取り組むと、おそらく効果は出てくるでしょう。
大事なのは「適切なタイミング」です。
まずは「今」のお子さんの発達の段階を知り、適切なアプローチが何かを見極めることが第一歩です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
また、お会いしましょう。