こんにちは。「おうちモンテで療育.com」のりっきー(@KodomoOtona58)です。
来たる2020年度、お子さんの学校での学びが大きく変わることをご存知ですか?
今回の記事では、学習指導要領改訂の経緯やどこが変わるのか、モンテッソーリ教育で育まれる力との共通点について紹介していきます!
Contents
新しい学習指導要領の改訂はいつ?
小学校の学習指導要領の改訂は2020年度を予定しています。
この改訂については、お便りが配られている小学校もあるようですが、ご家庭においてはあまり意識されていないのが現状です。
しかし、今回の改訂は「時代を踏まえた日本の教育の大きな転換点」とも言われ、子供達の学習スタイルや先生たちの提供する学びが大きく変わることが予測されます。
少なくとも私たち親世代が受けてきたような「先生から一方的に学ぶスタイル」がメインの教育と今後の授業スタイルは、大きく変わっていくことは間違いないでしょう。
文部科学省が定める教育課程(カリキュラム)の基準であり、全国どこの学校でも、学習指導要領に基づき教育課程が編成されます。この学習指導要領は、時代の変化や子供たちを取り巻く状況、社会のニーズなどを踏まえ、約10年ごとに改訂されており、教科書なども学習指導要領の改訂を受けて変わります。
新しい学習指導要領の詳しい改訂内容や狙いを知りたい方はこちらの画像をクリック↓
教育要領・保育所保育指針は2017年に改訂済み
あまり知られていませんが、実は幼稚園・保育園で用いられる教育要領・保育所保育指針は2017年にすでに改訂されています。
(小学校以降と同じく約10年ごとに改訂されています)
これは幼児教育から初等教育へのつながりを意識してのことです。
内容としては、これまでの幼児教育の基本である「環境を通しての教育」や「遊びを通しての総合的な指導」等のねらいや内容は維持される一方で、これからの社会を生きていくのに必要な資質・能力、主体的・協働的に学ぶためのアクティブラーニング、新しい学びに対応した評価実現のためのカリキュラム・マネジメント等、新しい概念が多く取り込まれています。
幼稚園の教育要領について、詳しくはこちら
保育園の保育所保育指針について、詳しくはこちら
中学校は2021年度、高校は2022年度に改訂予定
幼稚園、保育園、小学校と改訂があるということは、勘のいい方ならもうお気づきですね!
学習指導要領は中学校と高校においても改訂が予定されています。
そして、それぞれの改訂の内容はすでに公表され、2019年度からは小中学校で、2020年度からは高校でも移行期間がスタートします。
文科省では、今回の改訂について家庭や地域への理解を求めるコメントも出しています。学校で学んだことを日常生活で活用したり、家庭や地域での経験を学校生活に活かすことの大切さを述べているのです。
お子さまのいるご家庭では、本施行までに改訂内容や目指す子どもたちの姿を知っておくことが「子どもたちの持っている力」を真に伸ばすためのポイントとなりそうですね。
幼稚園から高校までの一貫した本気の教育改革
予測困難なこれからの時代を生き抜く大人になるために、義務教育のみならず、未就学の時期や高校においても一貫した教育体制を整えることは大切です。
約10年に一度行われる改訂ですが、特にこの10年は私たちを取り巻く環境が大きく変化しました。
グローバル化や人工知能、AIなどの技術革新が大幅に進み、人間に求められるものが様変わりしたからです。
欧米諸国ではとっくの昔に行われていた教育分野での学び方の改革ですが、日本では今ようやく国が本腰をあげて取り組もうとしているところです。
遅ればせながらではありますが、この改訂は、未来ある子どもたちが世界で求められる人材になっていくためにも重要なターニングポイントなのです。
どうして学習指導要領が改訂されるの?
海外の専門家によると、今後10〜20年で今ある仕事の半数近くが自動化され、今の未就学児が就職する頃には、65%の人が今存在しない仕事に就く、と言われているそうです。
このような変化が激しい時代、これまでのような知識重視の一方的に教え込まれるスタイルの学習で得られた能力だけでは、簡単にAIに取って代わられてしまいます。
今の子どもたちが大人になっていく頃には、どんな変化も受け止め、人間にしかない感性を働かせて人生を豊かにしていくことが求められるの時代が確実にやってくるでしょう。
つまり、求められるのは点数で測れるようなハードスキルではなく、協調する力、粘り強さなどのソフトスキルなのです。
「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」
新しい学習指導要領は、「知識及び技能」「思考・判断力・表現力など」「学びに向かう力」の3つを柱にして、子どもたちの「資質・能力」をバランスよく育んでいくことを目指しています。
具体的には次のような教育の充実を図ります。
・言語能力の育成
レポートの作成や議論
・外国語教育
小学校3・4年で「外国語活動」、小学校5・6年で教科としての「外国語」が導入され、高校卒業までにコミュニケーションとしての外国語の達成を目指して、「聞く」「読む」「話す」「書く」の力を総合的に育みます。
・プログラミング教育
小学校から「プログラミング教育」が必修化され、コンピュータに意図した処理を行わせるための論理的な思考力を育みます。高校では「情報Ⅰ」が新設され、ネットワークやデータベースの基礎などについて学習することになります。
・主権者教育
選挙権や成人年齢の18歳への引き下げに伴い、一人一人が主権者意識を持てる力を育みます。
・消費者教育
成人年齢が18歳に引き下げられ、18歳から1人で契約ができるようになることから、自立した消費者になるため、契約の重要性や消費者の権利と責任などを学びます。
そのほか、道徳教育・伝統や文化に関する教育・起業教育・金融教育・防災教育・理数教育などの充実が図られます。
そして、大切なのは「何を学ぶか」ではなく、「どのように学ぶか」が重要視される、ということです。
キーワードは「主体的・対話的で深い学び」、つまり「アクティブ・ラーニング」です。
これまでの学習の仕方は、教師が生徒に向かって講義をし、生徒が黒板を見て板書するスタイルが一般的でしたが、「アクティブ・ラーニング」ではそのスタイルを改善し、より生徒主導型の学習へと変わっていきます。
具体的には次の3つの視点が取り入れられます。
・学ぶことに興味、関心を持ち、自分の進路や職業などの方向性と関連づけながら、先への見通しを持って取り組み、学習を振り返って次につなげるような学びになっているかどうか
・生徒同士が目標を共有して力を合わせて活動したり、教師や地域の人材との対話や先人の優れた考え方を手掛かりにして、自分の考えを深められる学びになっているかどうか
・さまざまな教科で学んだ見方、考え方を相互に関連づけ、自分なりに問題を見出し解答を導き出せるような学びになっているかどうか
このような視点で授業を改善し、子どもたちが「わかった」「おもしろい」と思える授業を行い、新しい発見や豊かな発想につなげる工夫をすることで、子どもたちの資質・能力を育んでいくのです。
学習指導要領改訂のポイント「非認知能力」とは?
みなさんは「非認知能力」という言葉を聞いたことがありますか?
言い換えると「人間力」という言い方をすることもあります。
つまり、AIなどが実行できない「人だけが達成できる能力」のことです。
- 協調性
- 目標達成力
- やり抜く力
- 粘り強さ
- 自制心
- 人とうまく関わる力
- 感謝する力
などが「非認知能力」にあたります。
一方で反対語にあたる「認知能力」とは点数やIQなどで表すことのできる能力のことです。これらは近い将来、ほとんど機械化され、AIなどに取って代わられると言われています。
今回の学習指導要領改訂で目指す「生きる力」の中身は、言い換えるとこの「非認知能力」を育むということなのです。
教育経済学の代表的な研究者で、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんは、子どもの教育について以下の2つの考えを述べています。
1つ目は、「子どもの教育に国がお金を使うならば就学前の乳幼児期がとても効果的」ということです。
ヘックマンさんは研究の中で幼児教育の経済効果を計算しています。年齢と教育にかける費用対効果を調べたところ、年齢が若ければ若いほど、少ない教育資金で高い効果を得られるという結果が出たのです。
そして2つ目は、「幼少期に非認知的な能力を身につけておくことが、大人になってからの幸せや経済的な安定につながる」ということです。
その根拠として、アメリカの有名な研究に「ペリー就学前プロジェクト」というものがあります。これは、1960年代から現在まで続いている調査で、経済的に余裕がなく幼児教育を受けられない貧困世帯の3〜4歳の子どもたちに、週3回1日3時間のプリスクールに2年間通ってもらい、プリスクールに通ったグループと通っていないグループの将来にわたる追跡調査をおこなっているものです。
注目すべき点は40歳時点で現れた明らかな違いです。プリスクールに通ったグループは通っていないグループに比べて、収入が高い、持ち家率が高い、学歴が高いなどの明確な差が見られたのです。
一方で、IQに関して言えば、プリスクール通園から9歳あたりまでは通った子どもたちとそうでない子どもたちで差が出るものの、9歳以降その差はほとんどなくなっていました。
ヘックマンさんは大人になってもより幸せでいられるのは、プリスクールで認知能力を伸ばしたからではなく、「非認知能力」を身につけたことが大きな要因ではないかという結論を出したのです。
つまり、吸収力が高い乳幼児期に、いかに「非認知能力」を身につけさせられるかが、その後の人生の幸せに大きく影響する分かれ目となります。
日本人の幸福度は、世界の156カ国を対象に調査で58位で他の先進国に比べて低いと言われています。「教育の質が高い」と言われる北欧諸国がランキングのトップ10の半数を占めていることからも、「非認知能力」が身につく教育は経済的なレベルの高さのような目に見える幸福だけではなく、国民全体の幸福度を上げる起爆剤にもなるのではないでしょうか。
「非認知能力」が今注目を集めているのはなぜ?
どうやって身につければいいの!?
もっと詳しく知りたい方はこちらがおすすめです↓
モンテッソーリ教育と「非認知能力」の関係
モンテッソーリ教育はイタリアのマリア・モンテッソーリが約110年前に考案した幼児教育で、従来の教育と大きく異なる点があります。
教師は「教えることをしない」のです。
子どもを観察し、その自主性を重んじ、その子の発達状況に応じた援助をすることで子どもの持つ「自己教育力」を発揮させ、能力を伸ばしていくのです。
モンテッソーリ教育を経験した子どもの育っていく姿は「自立していて、有能で、思いやりと責任感があり、一生涯を通して学び続ける姿勢を持った人間」と言われています。
下記に今回の学習指導要領の改訂に込められた思いを抜粋しましたので、ご覧ください。
生きる力
学びの、その先へ
新しい「学習指導要領」の内容を、多くの方々と共有しながら,子供たちの学びを社会全体で応援していきたいと考えています。
学校で学んだことが、子供たちの「生きる力」となって、明日に、そしてその先の人生につながってほしい。これからの社会が、どんなに変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。そして、明るい未来を、共に創っていきたい。
2020年度から始まる新しい「学習指導要領」には、そうした願いが込められています。
これまで大切にされてきた、子供たちに「生きる力」を育む、という目標は、これからも変わることはありません。
一方で、社会の変化を見据え、新たな学びへと進化を目指します。
(改訂に込められた思いより抜粋)
「考える力」と「主体性」を育むモンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育の現場では、教師は子どもの間違いをあからさまに訂正することはしません。子どもたちが正しいやり方に自ら気づくように繰り返しやって見せたり援助するのみです。
また、子どもたちがやりたい活動を納得するまで取り組めるように、環境を整えることを大切にしています。やりたいことを納得するまでやり切った子どもたちは、活動を切り上げるタイミングまで自分で決めることができるようになります。
このような一連の活動の繰り返しによって、自分で「選択」し、自分で「考え」、主体性が身についた人間になっていくのです。
モンテッソーリ教育の現場では、これからの教育が目指す「アクティブ・ラーニング」の考え方が自然と浸透しているといっても過言ではありません。
そんなモンテッソーリ教育に興味を持たれた方は、書籍『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』を一度読んでみてください。 モンテッソーリ教育が子どもたちにもたらす影響や、今注目されているのはなぜかが、初心者にわかりやすく解説されていて、手軽に導入するポイントも掲載されている良書です!↓
アクティブラーニングの視点と現場の課題
学習指導要領の話に戻りましょう。
とても理想的に思える今回の改訂ですが、実は課題もあります。
「アクティブ・ラーニング」は生徒が受動的に授業を聞くのではなく、「なぜ?」「どうして?」という知的好奇心を触発されて能動的に学習できるような工夫が必要です。
そこでまず出てくるのは、教師側の人的資源の問題です。
子ども主体の活動をするためには、教師側の大きな意識改革と、授業スタイルの変更が求められます。
具体的には、体験学習や教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループワークを中心とするような授業のことを指します。
果たして急に変えることができるのか、現場の教師の間でも不安視されているのが現状です。なぜなら教師側が子ども時代にそのような学びのスタイルを経験していないからです。
そのため、この改革は時間をかけた長丁場になることも十分予測されます。
子どもたちの成長は待ったなし!
教育の質的転換に期待を持ちつつも、お母さん・お父さん自身が、意識を変えて、自ら能動的に学ぶ姿を見せてあげること、休みの日などに社会を学べる体験をさせてあげることが大切になってくるのではないでしょうか。
子どもたちにどんな未来を残すかは大人次第
あなたは、お子さんにどんな大人になってほしいですか?
変化の激しいこの時代、今の子どもたちが大人になる頃にはどんな世界になっているのか、予測するのはとても困難です。
物質的なものをどんなにたくさん残してあげても、変化に耐えられないかもしれません。
でも、どんな未来にも対応できる力、つまり「困難を乗り越えて解決できる力(問題解決能力)」「思考力」「失敗から学ぶ力」「新しいものに挑む力」といったような一生ものの能力を育む土台を用意してあげることができれば、お子さんはどんな状況になっても生き抜いていけるのではないでしょうか。
その助けの一つとして、今回の記事ではモンテッソーリ教育を紹介させていただきました。子どもたちの未来のためのヒントとして少しでもお役に立てば嬉しいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
また、お会いしましょう!!
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